西宮薪能 16年9月21日(火) 西宮 越木岩神社 橋弁慶「いで物見せん手練の程と…」 武蔵坊弁慶が五条の天神へ「丑の刻詣」をしようとすると、御伴の者から、五条の橋には恐ろしい者が出ると聞かされます。それは12、3歳程であり、小太刀で斬って廻る姿は、さながら、蝶、鳥の如くであり、大勢でもかなわないとの事です。 弁慶は、今夜は思い止まろうとしますが、自分ほどの者が聞き逃げは無念と思い直し、その者を退治してやろうと、五条の橋へ出かけます。 さて、五条の橋を通った都の者が、逃げてきます。今日も、橋に出た様子です。五条の橋には、傍目には女性とも見えるような牛若丸が、通る人を待っています。 明け方近くなって、弁慶は大鎧を着込み、大長刀を持ち、五条の橋へ現れます。牛若丸を女性と思い込み、過ぎ去ろうとする弁慶を、牛若丸がなぶります。弁慶の持つ長刀の柄本を蹴り上げてしまうのです。怒った弁慶は、「いで物見せん、手練の程と」斬ってかかりますが、小さな牛若丸に翻弄され、ついに降参してしまいます。 素性を聞くと、源義朝の子とわかり、主従の約束をします。 古くより語られる、五条の橋での、牛若丸、即ち後の源義経と、武蔵坊弁慶の出会いのお話です。能では千人斬りをしているのは牛若丸になっていますが、これより後の源平合戦での平家滅亡までを思えば、大きな出会いと言えます。 さて、舞台では、当然の事ながら、弁慶を大人が演じ、牛若丸を少年が演じます。本物の牛若丸ではありませんので、実際に戦うと子供が負けてしまう事でしょう。しかし能では、何百年もの間やってきた、「型」というものがあり、何時、どこで、何をするか、全て決まっており、先人たちの工夫が、残っております。その通りやれば、大人が子供に負ける様になっているのです。但しちゃんとやらなければ、面白くはならないのですが…。そのちゃんとやるための工夫、研鑚が、現代の舞台に出演する者の生涯のつとめです。 橋弁慶のお話が、今日の舞台によみがえれば、と考えております。 平成16年9月21日 西宮薪能 上田拓司 |